2025年3月25日に大阪高裁の判決がありました。
札幌高裁、東京高裁、福岡高裁、名古屋高裁に続き、同性婚を認めないこと(正確には、同性婚を認めていない民法と異性婚のみの届出を認める戸籍法の諸規定)を違憲としました。
憲法24条1項は同性婚を保障していないと明示し、13条違反も否定しましたが、本件諸規定は、性的指向が同性に向く者の個人の尊厳を著しく損なう不合理なものであるとして、憲法14条1項と24条2項に違反するとしました。
【本件諸規定は、同性カップルの個人の尊厳を著しく損なう不合理なものである】
- 相互に求め合う者同士が自ら選択した配偶者と婚姻関係に入る利益は、現代社会を生きる上での個人の人格的生存と結び付いた重要な法的利益に当たるものといえ、同性カップルがこれを享受することができないのは、同性カップルの人格的利益を著しく損なう。
- 性的指向が異性に向く者が多数を占める社会において慣習として存在した婚姻が明治民法により法制化されたが、子をもうけることや自然生殖能力があることは婚姻の成立、維持の要件とはされず、当初より婚姻と自然生殖の可能性とは一体のものとはされていなかった。
- 性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(性別取扱特例法)により、自然生殖の抽象的可能性もないカップルの婚姻が認められており、自然生殖を背景とする異性婚保護の価値観は現行の婚姻制度の説明としてはもはや十分でない。
- 伝統的婚姻観を重視するがゆえに同性婚の法制化に困惑し心理的抵抗を覚える国民に、多様な属性、価値観を有する国民が相互に人格と個性を尊重し合いながら平和に共生するため、もはや社会の倫理にも健全な社会道徳にも公益にも反しないとの社会的合意が形成されているというべき同性婚に対して冷静かつ寛容な態度を期待することは、個人より集団の利益を優先する明治民法の規定を廃し、かけがえのない個人を尊厳ある主体として重んじることを旨として家族制度を構築することを命ずる憲法24条の理念に沿うものといえる。
【本件諸規定は憲法14条1項に違反する】
- 性的指向は、ほぼ生来的に決定される自然的属性であり、自己の意思によって左右することができないものである。同性愛は、疾患でも障害でもなく、人間の本能的欲求の発露であり、同性カップルが互いに自然な愛情を抱き、法的保護を受けながら相互に協力して共同生活を営むことは、異性カップルのそれと同様に人格的生存にとって重要であって、現在では、社会の倫理、健全な社会道徳、公益のいずれにも何ら反するものではないとの社会的、規範的認識が確立されている。
- 国は、同性間の人的結合について異性間のそれと同視し得るほどの社会的な承認があるとはいえず、同性間において、婚姻類似の人的結合関係を構築、維持し、共同生活を営む自由は何ら制限されておらず、契約、遺言等の制度の活用により事実上の不利益の緩和・軽減の余地もあるから、本件区別取扱い(婚姻制度の利用についての性的指向による区別取扱い)につき合理性があると主張する。しかし、社会的承認があること、すなわち社会の多数者がその関係を婚姻と同視し、婚姻と同じ保護を与えることを是とするに至らなければ区別取扱いの合理性があるとするのは、性的使用数者の権利利益の保護を不当に制限することになるものであって、憲法14条1項の解釈として採用することはできない。
- 同性カップルの法的保護を法律上の婚姻と異なる形式で行うことは、性的指向という人間の自然的、本質的属性によって、その属性に基づく人格的生存の在り方において合理的理由のない差異をもうけることになり、法の下の平等の原則に悖るし、性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解が必ずしも十分でない現状に鑑みると、新たな差別を生み出すとの危惧が拭えない。
- したがって、本件諸規定は、性的指向が同性に向く者の個人の尊厳を著しく損なう不合理なものであり、かつ、婚姻制度の利用の可否について性的指向による不合理な差別(合理性のない区別)をするものとして法の下の平等に反するから、国会の立法の裁量の範囲を超えるものであって、憲法14条1項及び24条2項に違反する。